アンティーク時計のムーブメントの種類と使用されている宝石の役割
アンティーク時計
アンティーク時計とは、1970年代のクォーツ時計が発売される前に製造されていた、機械式時計を指します。
時計職人が一つずつ丁寧に手作りした、世界に1つしかない自分だけの時計を楽しむことができるうえに、現行モデルよりも手に入れやすい価格で販売されていることから、近年とくに人気が高まっています。
機械式時計のムーブメントを見たときに、赤い宝石が埋め込まれているのを発見したことがあるという方はいませんか?
この記事では、アンティーク時計に使用されている宝石について詳しくご紹介します。
赤い宝石について疑問に感じている方は、ぜひ参考にしてみてください。
ムーブメントの種類
時計には機械式とクォーツ式が存在し、さらに機械式には自動巻と手巻のムーブメントに分かれています。
まずは、時計のムーブメントの種類を詳しくご紹介します。
手巻
手巻の時計は、その名の通り自らの手によってゼンマイを巻き上げる必要がある機械式時計のことです。
リューズを巻くことによって内部のゼンマイが巻き上げられ、巻き上げられたゼンマイがほどけることで針が進む仕組みになっています。
手巻はリューズを40~50回巻くことで、約40~50時間動き続ける時計なので、毎日使用するには毎日リューズを巻きあげる必要があります。
自分でゼンマイを巻き上げることを面倒くさいと感じる方もいれば、ゼンマイを巻くことで時計との会話を楽しむ方もいて、好みは人それぞれです。
自動巻
自動巻の機械式時計は、腕を動かすことでゼンマイが巻き上がるようになっているため、自分でリューズをクルクル巻く必要がありません。
時計内部の基本的な構造は手巻と同じですが、リューズを巻くのが面倒だと感じている方は自動巻の機械式時計を選ぶ傾向にあります。
体の自然な動作に伴ってローターが回転するため、腕時計を着用しているだけでゼンマイが巻き上がります。
しかし、完全に止まってしまった場合は、手巻と同様にリューズを巻きあげて使用する必要があります。
クォーツ
クォーツ式の時計は、水晶(クォーツ)を用いて1秒間に数万回振動し、電池を動力とする腕時計です。
世界で初めてクォーツ時計が発売されたのは1969年となります。
クォーツ時計は、機械式のようにゼンマイを巻き上げないことで時間が止まってしまうようなことはありません。
機械式の時計に比べると時間の誤差も生まれにくく正確であることや、機械式時計のようなメンテナンスが必要ないという点がメリットといえます。
しかし、クォーツ式は電池を交換しても動かなくなってしまった場合、修理が難しいとされています。
機械式時計のように、数十年経っても使い続けるということは難しいケースがあるため、資産価値が乏しいことはデメリットといえます。
スプリングドライブ
スプリングドライブとは、第3の革新的な新機構といわれる、セイコーが開発した駆動機構のことです。
機械式のゼンマイとクォーツ式の水晶振動子によって時計の動きを制御する、自己完結型の駆動システムです。
スプリングドライブは、1977年に構想が生まれましたが完成したのは1999年と、20年以上の歳月をかけて現実のものとなりました。
従来の時計にはない日差1秒以内という高精度を実現し、2004年からセイコーの主要モデルに搭載されはじめた機構です。
アンティーク時計に使用されている宝石とは
ご紹介したムーブメントのなかでも、機械式時計には宝石が使用されており、メーカーのホームページなどには「17石」「21石」といった「石数」でその数が示されています。
ここからは、アンティーク時計に使用されている宝石について詳しくご紹介します。
宝石の役割
機械式時計のムーブメントは、地板と受けによってガンギ車などの歯車、テンプに軸を通して挟み込み固定しています。
この歯車、テンプ、軸は回転したり、往復運動を繰り返したりしながら動き続けて1秒をつくりだしています。
時計の表側だけ見ていると、その複雑な動きを見ることはできませんが、シースルーバックの場合は、裏側を見ると複雑に動いているムーブメントを目にすることができます。
激しく複雑に動くパーツは、接触することによって摩擦が生まれて摩耗してしまい、時計の精度を狂わせる原因となるのです。
そのため、軸受けとして宝石が使われます。
地板と受け、両方の軸と接触する部分に軸受けとなる穴石を設置することで、摩耗を減らそうという考えのもと、宝石が使用されています。
機械式時計にはルビーが使用されている
さまざまな機械製品において、ボールベアリングは部品のダメージ軽減のために使用されていますが、機械式時計に大きいベアリングを採用することは困難です。
そこで、大きな穴石の素材を使用できないことから、硬度の高い宝石を使用するようになりました。
モース硬度という硬さを測る数値では、ダイヤモンドが10、ルビー、サファイヤが9となっています。
ルビーは一見ダイヤモンドより弱くみえますが、ダイヤモンドよりもルビーのほうが摩耗によって壊れにくいこと、生活における熱に強いことから、機械式時計の内部にルビーが使用されるようになりました。
昔の時計には本物のルビーが使用されていましたが、18世紀に人工宝石が生成されるようになってからは、軸受けに使用されるのはほとんどが人工ルビーとなっています。
石数の差とは
石数は、ムーブメントの構造が複雑で多機能になってくると、その分増えることになります。
1930年頃までは、7石が必要最低限とされていたため、7石以上の石数を確認できれば、クオリティの高い時計と考えられます。
しかし、1940年代からは技術が進歩したことによって、ムーブメントの構造もより複雑になり、機械式時計の石数は15~19石まで増えることとなります。
その後は必要最低限の石数を超え、1965年にオリエントから100石を採用している時計が発売されたことが話題となりましたが、その中でも実際に機能しているのは17石だけであり、石数によって機能が変わるなどの誤解を招くようなマーケティングが行われていたのです。
現在では、ムーブメント内の機能をもたない石を宣伝目的で増やすことが禁止されるISO規格が導入されたことにより、実際にムーブメントの性能を表す石数が表示されるようになりました。
石数はどのように確認する?
石数は、以下の方法で確認することができます。
- カタログ
- ホームページ
- ムーブメント本体
- 文字盤
カタログやホームページで時計を選んだことがある方は「17石」「石数:17」などと書かれている文字を目にしたことがあるのではないでしょうか?
さらに、ムーブメント本体にも「17 JEWELS」などと刻印されており、時計を分解してみると、この数字を確認することができます。
一部の時計で文字盤に直接石数が刻まれているものもありますが、多くの時計は文字盤ではなくムーブメントへの刻印のみとなっています。
石数は多いほうがよい?
機械式時計の石数は、最低7石、最大でも21石程度あれば十分だとされています。
それ以上の石数を使用している時計は、耐久性は上がるものの莫大な費用と時間をかけて製造されており、時計に付加価値がついているものだと考えられます。
石数は多ければ多いほどよいというわけではなく、装飾として施されている場合が多いため、その分値段が高くなっている可能性もあります。
地板と受けの摩耗を減らすために用いられる宝石は、複雑な機構であれば数が増えるケースもありますが、21石以上は装飾である可能性が高いと覚えておきましょう。
まとめ
ムーブメントの種類と、中に使用されている宝石についてご紹介しましたが、参考になりましたか?
ムーブメントには大きくは機械式とクォーツ式があり、セイコーが開発したスプリングドライブも話題となっています。
また、機械式ムーブメントの中には、地板と受けの摩耗を減らすことを目的とした人工ルビーが配置されています。
時計を選ぶ際に石数にも注目してみるのも楽しいかもしれません。
シースルーバックの場合は、機械が動く姿を見るのと同時に中のルビーを眺めることもできますが、その意味を知ることで見方も変わってくるのではないでしょうか。
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